Peterson1(2016年アメリカ、フランス)は思いかけず忘れ得ない映画になりました。
Jim Jarmusch2監督が撮る作品はスタイリッシュで通好み3とされていると勝手に考えていました。少なくともこの作品を観るまでは。ですが、観終わった後に、実のとこはその場所からは対局に位置するのではないかと考えるようになりました。老若男女問わず誰が観ても、心になにかあたたかな感情を深く染みわたらせてくれる、例えば山田洋二4監督の「寅さん」のような、誰の気持にもはいってくるような(個人的な意見ですが)作品です。
それで思い出したのが、この監督が撮った別の映画で"Night on Earth5"(邦題は「ナイト・オン・ザ・プラネット」)があり、世界中の街の普通のどこにでもいるような人達の日常の夜を「タクシー」を舞台にオムニバス形式で描いていて、ひとつひとつのエピソードがちょっとずつ心のわだかまりを解いていってくれて、最後になんともいえない、心をときほぐされたような気持ちになったことです。
最初は軽い気持ちで映画を観だしたのに最後にはとても忘れられない大切な感情を(説明することは難しいけれど)残してくれる、どちらもそういった映画でした。
この映画には、Adam Driver6、Golshifteh Farahani7、 /Barry Shabaka Henley8、william jackson harper9、Method Man10といった人が出演しています。
あらすじは、ニュージャージー州のパターソンという街に暮らすパターソンという人のなにげない1日が7回繰り返される、というものです。
朝7時に妻よりも早めに起きて朝食を済まし、バスの運転手の仕事に出かけ、帰ってきて妻とたわいもないが暖かな会話を交わし、飼い犬のマーティンを連れて散歩に出かけ、帰り際にバーで、憎めない隣人達とビールを1杯のみ帰宅します。典型的な毎日が再びやってきます。でも、ひとつとして同じ日はなくて、いつも何かが起こるけれど、劇的に何かが変わることもはなく、静かな驚きと安堵と楽しさと悲しさが少しずつやってくる様子が描かれます。
そんな日々の積み重ねの中から湧き起こる気持ちが、詩が綴られていきますいきます。 詩を綴る事と、日々生活を重ねる事が淡々と積みあがっていった先に、誰しも生活を営む中であじわう喜怒哀楽の先の深みを感じるような気がしました。
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たとえば「センスの良い人は、映画を観ているという事実。おしゃれな人の“定番”映画9作|MERY」です(でも『アメリ』が好きな人の「センス」はいい意味で「悪い」と言えると思いますが)。 ↩︎